マンU対バルサ戦、現地観戦記の雑感の続き。

続きです。前回のエントリで疑問に思うポイントもあると思うので。

かなり長いです。さらに、チームの戦術とか各選手の評価とかシステムとかについては一切語ってません。「史上最強のアホ(達)」 「そうだエヴァトンを買おう」のエントリが財務&会計上のテーマだったように、この2回のエントリは組織運営のマネジメントが主体のテーマです。

よって大多数の人には面白くないと思いますが、社会人の方には、なんとなく言わんとしている事が分かるかもしれません。例によって情報の伝達に齟齬が生じてる可能性が大きいですが。

  1. disciplineがない組織同士で、なぜチェルシーはダブルの可能性があり、FCBはここまで腐るのか(ただしCC決勝でスパーズに負けたのは予想外。この副作用がUEFAカップ枠に出てるのでエヴァートン、ヴィラ、ポンピー、ブラックバーンとかが大変なんですが)
  2. なぜ02-03シーズンに比べてFCBのターンアラウンドは比較的容易だと思うのか。
  3. なぜライカールトで成功できたのか。
  4. なぜ、モウリーニョだと来期のオッズが上がるのか。
  5. なぜ、熱くリーダーシップに優れたキャプテンが居ても、組織にdidcplineを徹底できず、究極的にはマネージャー(監督)の仕事になるのか。
  6. おまけ。代表監督についての雑感。

1に関して。暴論を覚悟して言います。

アングロサクソンの組織運営とイベリア半島の人間の組織運営の違いが大きいと思います。日本人から見ると仕事しないし、いい加減な英国人ですが、戦争やると大体勝つように、プレッシャーが掛かる状況だとアングロサクソン系の組織は意外に機能します。モウリーニョ時代に比べてグラントの指揮する組織にほころびが見えるのは他チームのファンから見ても明かなのですが、「サイクル」というか「discplineが失われる=組織が腐るスピード」がイベリア半島の組織より遅い、と。

この比喩を使うのは危険だと前置きした上で書きます。

植民地政策&移民政策において、アングロサクソン人が関わった組織マネジメント=究極的には国家運営はそれなりに機能しています。特にアングロサクソン人が入植に物理的に関わった国家、アイルランド(北も含む)、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ合衆国、カナダ。アイルランドや北アイルランドはまだ問題山積みですが、それでも下の例と比べてみて下さい。

イベリア半島ならびにイベリア半島の人間が関わった植民地政策と組織マネジメント。(究極的には国家運営)

アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイ、ペルー、チリ(チリはかなりまとも)、コロンビア、メキシコ、パナマ、コスタリカ(コスタリカは相当まとも)

さらに忘れちゃいけないのはイベリア半島の両国は70年代前半まで、西ヨーロッパなのに、政治システムが独裁性だったって事です。

イングランドで暫く生活&仕事をしてきて思う事なのですが。

アングロサクソン系には「まだ」組織が勝手に暴走して自己規律を失うのを止めようとする因子が存在しているように思えます。

比べてイベリア半島系は。放っておくと、みんなすぐバラバラ。

バルセロナも現チェルシーもバラバラでしょう。でもチェルシーにはモウリーニョの残滓があり、かつイングランドのチームなんですよ、きっと。例え選手が多国籍でも。だからチームのdiscplineが失われていくスピードがイベリア半島系のクラブに比べて遅い。

クライフは昨シーズンの途中、既に「バルセロナは終わった=次のサイクルに入った」と言いました。あの時、いくら何でもまだそこまで腐ってないだろうと思ったのですが。あっさり腐って、散り行く花びらをを現場で見てると、クライフの慧眼に頭が上がりません。バルセロナの組織は、常に腐るスピードと新陳代謝を行うスピードの勝負になってるのでしょう。

1はかなり暴論、ロジック化するのにはデーターが足りてませんので、チラシの裏書き程度に読んで下さい。

2と3に関して。

国内リーグでは組織の規律のなさにより、ポカ、ミスを繰り返し、CLでも肝心なところでやらかしますが。それでもバルセロナの個々の能力は相当なものです。実際負けましたが、オールド・トラフォードでマンU相手にポゼッションは60%超えて、パスを回し、ラインを上げて正面切って互角以上勝負掛けられるチームは全欧州を見ても極めて少ないです。しかも今の組織にはdiscplineが決定的に欠けているのにも関わらず、です。

対して、02−03のシーズンは、監督は交代の連続、選手は怪我と怠慢、クラブは大赤字、CL出どころか、セグンダ行きとか言われてましたから。それこそあの当時は、

A=「法人組織の改革」マネジメントがdebtの削減を行い収支を改善させ

B=「ピッチ上の組織のスクラッチ」監督、選手ともども大手術が必要

AB両面での大改革が必要だった訳であります。しかも収支の改善を行うという事は札束切って大物選手を獲得という動きを阻害する事に他なりません。対して今のFCBについていうと、すくなくともAの動きに関しては遥かに楽で、Bに関しても選手個々の能力は十分以上だと思います。

後はdiscplineのなさによって失われたチームケミストリーを取り戻せれば、02−03当時より復活は早いだろうと思っています。これは慰めかもしれませんが、それでも調子の良い時のバルセロナはまだ良い形になってますから。

ライカーで成功したのは、まずタイミングです。あの時、組織全体の目的と方向性が確固たるベクトルに固まっていました。

クラブは壊滅的で、やっとの思いでロナウジーニョを獲得した時に、FCBにとって果たさないといけない目標は、一刻も速くCLに戻り、かつ国内のタイトルを取れるレベルまで戻る事。これは一分の揺るぎのない、マネジメント/ピッチ共有の目的意識でした。個が利己主義を起こして暴走する前に、組織が成功しなければ明日がないという強烈な危機感。

それと、「運」

ロナウジーニョ移籍直後はシステムが固まらず、前半はライカー解任話が常にありました。しかし冬にダービッツが移籍して、中盤の底でチームのケツを支え、ロナウジーニョを真ん中から左サイドに移したところから「偶然にも」最も効果的なシステムが出来上がったと。

今だから思うのですが、あの年に劇薬的な監督を投入したら、バルセロナはさらにダウンスパイラルに陥る可能性が合ったと思います。しかしライカーのMr. Nice guyっぷりが、組織として個々の選手が共通の目標にまとまっていく良い親和剤になったのではないかと、今になると思います。

「あの時の選手には危機感とハングリーさがあり、目的意識は常に明確でした。」

しかし今のクラブと選手には成功とお金と名声があり、危機感とハングリーさを感じられません。こういう組織に基本的なdiscplineがないと、収斂がつかなくなるのは散々見て来ました。だから、モウリーニョの残滓とdiscplineがだんだん減耗していくグラントたんでのチェルシーの来期が非常に興味があるのです、個人的に。イングランドチームなので、減耗速度が遅いのかと思ってますが。

組織運営では、リーダーシップは独裁と紙一重で、民主主義(調整型)は信念なしと紙一重です。どちらが必要とされるかは、その時組織が要求する事象によって大きく変化します。ですから、このエントリでは悪口のように書いてあるかもしれませんが、フランクライカールトが無能だとは決して思ってません。ただし、ライカールト型はアントレプレナー/組織の改革者には向きません。モウリーニョの過剰なまでの自信、attitude、スタイルは彼が従属する組織においては、他者と大きな摩擦を引き起こすでしょう。しかしモウリーニョ型は組織を強烈のドライブします。(driveは運転という意味ではありません、念のため)。モウリーニョを考察するにあたっては前GE会長のジャック・ウェルチが一つの良い見本かもしれません。

4 それは結局オッズの問題だ。

なぜモウリーニョだと勝率のオッズが上がるのか。

A  既に明記したように、現有戦力でも十分戦える能力が選手個人にはあります。ミリート、ザンブロッタ(移籍しなければ)、凸、プジョルは復活する可能性が高い。モウリーニョが組織にインプリするdiscplineによって、民主主義的なライカールト配下ではチームの結束を脅かしかねない激烈な個の集団を束ね、

B  2002頃と同様、タイトルなし、先行き不安定、方向性なしの組織に対して、少なくともモウリーニョは「実績」を持ち込め、外野を黙らせられる。

大体、イベリア半島のチームの悪いところは結果が出なければ即監督解任、とかリーグ優勝しても「スタイルが合わないから」解任とか無茶苦茶な事を抜かします。ケイロスがあっさりマドリーの監督を解任されて、今年言ってコメントを思い出しました。「マンUは今期マンCにダブル食らったけど、マドリーがアトレティコにダブル食らったら、監督は即解任だ」と。

更に会長選挙を巡って魑魅魍魎の争いが水面下で繰り広げられていて。ある日、ジョン・トシャックがTVインタビューでこんなJokeを言ってました。

「俺の人生で最大の失敗は2回目のマドリー監督就任を受諾した事だ」「1回目にすんごい権力闘争の渦中にあり、2度とこんな思いをしたくないと決心したのに、人間はアホだから忘れるんだよね(笑)

同様の事はカタルーニャでも日常茶飯事です。

モウリーニョで即結果が出なかったとしても、「実績」の面で、”俺以上の人材が居たら連れてこい”、と言って外野に通してしまえる素地が彼にはあります。

カスティーリャに弾圧されてきたカタラン人は良く言えば現実主義、悪く言えば世知辛いお人柄です。堂々と正面切ってマドリーの白シャツは売らずとも、店の中にはちゃんと品揃えがあります。店のおっちゃんに聞けば、「観光客に売れるから」と言います。主体国家を持たず、他民族が大多数を構成する組織内で権勢を維持するには、「実利」が必要だってことが良く分かってる人達です。

モウリーニョが就任する事によってオッズが上がるのであれば、普通に「宜しくお願い申し上げます。」というでしょうね。

実際のところ、昨晩言ってました。There’s no reason why we need to turn down Jose.

主観的確立ですが、ラウドルップやペップが監督になるよりもモウリーニョの方が勝率オッズが現段階では高い。だったら高いオッズに掛けるのが理性的だという事なんでしょう。

注:モウリーニョが就任するのかどうかは依然として不明&微妙ですが、昨日の敗戦で流れはFCBに傾いたような気がしてます。

5 チームキャプテンシーと監督のdiscplineについて。何故最後は監督なのか。

端的に言うと、キャプテンには他の選手を雇用/解雇する生殺与奪の権利がありません。ピッチ上においてだけ、キャプテンシーを発揮するのと、組織全体に包括的なdiscplineを要求出来る監督との違いはここです。プジョルがどんなに熱くてリーダーシップがあっても、彼がピッチの従業員に規律を強制する事は出来ません。これはジョン・テリーも同様です。選手は究極的にはサラリーをもらって働く「従業員」であり、従業員のリーダーとして他の社員を鼓舞する事は出来ても、組織を構成するメンバーの生殺与奪の権利を有していません。

マンUが幸運だったのはファーガソンという組織に強烈なdiscplineをインプリ出来る監督ににロイ・キーンという希代のキャプテンがチームに居た事でしょう。

6 おまけ。代表監督

5につながるところ大なのですが。ナショナルチームの監督は大変です。だって国民と選手両方がぶうぶう言うわけですから。おまけに選手はクラブでサラリーをもらってプレーする「従業員」ではなく、「お国のため」という大義名分で、「何故俺を使わないのか」とメディアを使って圧力を掛けたりするみたいです。想像ですけど。

06年のイングランドとブラジルは良い例でしょう。タレントは豊富、実績も豊富、でも組織としては全く機能しない。ブラジルのトップ4人とイングランドの中盤4人を一緒に使うと上手く回らないのに、監督がそれを否定できない。なぜか。

ファンドマネージャーと一緒です。

顧客から預かった資金を、他社のファンドマネージャーも (美人コンテスト的に)組み込む銘柄で構成して失敗しても、言い訳が可能です。でも皆が買わない銘柄でファンドを構成して失敗したらキャリアは終了です。

だから、スベンも、ブラジルの前アホ監督も

「ジョーコール、ジェラード、ランパード、ベッカム」で中盤を組み。ブラジルは「ロナウジーニョ、カカ、豚、アドリアーノ」を一つの組織に入れ込んじゃった訳です。

もし「ベッカムは調子悪いからスタメン落ち」とか「ロナウジーニョは調子悪いから休み」とか「ロナウドは体重重すぎるから使わない」とか言いまして、結果として負けてたら、今頃絶賛逃亡中ですよ。無能監督として。「何でベッカム使わないんだ。だから負けたんだ」というイングランド国民の大合唱。

でも、みんなが(国民も選手も)望むような当たり障りのない銘柄で構成して、失敗しても、「運が足りなかった」とか「選手は良くやったけど、相手が予想以上にタフだった」とか言えば半年ー1年もすれば皆忘れるわけです。

大衆が望むメンバーで組んだ場合、アップサイドのリターン(優勝するとか)は巨大なのに対して、ダウンサイドのリスク(敗退)は言い訳可能です。

しかし、大衆が望まない/疑問を挟まれる人選をした場合、アップサイドの向上は上記に比べて比較的穏やかなのに対して、ダウンサイド(失敗した場合)はキャリアが破滅です。

だからスベンのダメージはそれほどではなく、1年程度でマンCの監督にあっさりと就任しちゃった訳です。いまちょっと去就がピンチらしいですが。おそらくマクラーレンもそのうち復帰するでしょう。

幸いにもカペッロとドゥンガは過去の名声じゃなくて、今調子が良い選手を選ぶ、若手を登用するというスタンスですので、割といい感じに修正されるのではないかと思っております。ともあれ、国民と選手に対して、「俺はこういうシステムと理念で選手を選び、組織化する」という哲学がきっちりしていて、過去の実績はこうなんだぜ、というのがないと本当に大変なのだと思います。

岡ちゃん、大丈夫かなー。

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2件のコメント : “マンU対バルサ戦、現地観戦記の雑感の続き。”

  1. kamecave Says:

    かめです。こんにちは。
    長すぎます。(笑)とお約束のつっこみを入れておいて。

    でもかなり興味深く読ませていただきました。
    1については暴言ではなく、かなりリーズナブルな組織論になっていると思います。
    英国統治下のエリアとスペイン統治下のエリアの組織論なんて、大学あたりの論文にもなりそうな、興味深いテーマです。

    ま、FCBはともかく、そんな崩壊のサイクルに入っているかもしれないチェルシーにやられてしまう赤いチームはどうなのか・・・とも思いますが(汗)
    そして、モウさんができなかったこと(CL決勝進出)が、なんでアダムズファミリーにできたのかとかも、理論だけでは語れないサッカーの妙味なのかなと。

    赤いチームもお時間のあるときに分析してみてくださいー。

  2. aston1970 Says:

    kameさん
    毎度です。長いですよね、書いてて時間取られまして、自分でもしまったと思いました。でも、マネジメント絡みの話なので、自分のメモランダムにも使えるかな、と思ってうpしてしまいました。

    国民性と組織の運営については、詳細なデーターや実例が必要になるので、(でないとデマの類いになっちゃう/バイアス掛かった刷り込みになる)あくまでチラ裏で読んでもらえるとありがたいです。

    自分で突っ込むと
    イベリア半島系のアルゼンチンとブラジルとウルグアイはW杯何度も勝ってるけど、これはどういうことだ?という話にもなりまして。

    この突っ込みに対しては
    A 競技人口の多さ
    B 競争の激しさ(サッカー選手として成功するか、ドラッグディーラーになって撃たれて死ぬかかみたいな人生設計が必要な国々)
    C ハングリーさ(上記と類似しますが。まず自国クラブで成功して、その後欧州で大もうけしてやるぜ、みたいなのが死ぬ程います。)
    D 国家のアインデンティティの問題。負ける事が国民の生死に影響をおよぼしちゃう国々。(イベリア半島の国はW杯に負けても、まーいつもの事で、みたいな感じですから。国よりクラブだ、と)

    と、クラブレベルとはまた違った要素が入ってきますので、割愛しました。

    チェルに負けた赤いチームはdiscplineの問題じゃありません。もう少し、統計的なデーターで説明が出来ますが、また機会があれば書きます。

    グラントたんで優勝すると、チェルファソの反応が興味深いんですが、何でグラントたんなのか、というと、これも最後はオッズの結果です。モウの言ってるthe best team lost、はそれなりに説得力があるんですよ、実は。

    でも、赤いところとチェルシーの問題はまったく違うベクトルにあります。
    シーズン前から言ってましたけど、08の予想は3位でしたから、ちょっとずれたけど、こんなもんかな、というレベルですね。

    赤いところはジグソーの1ピースが変わるだけで、劇的にターンアラウンド出来ます。これに関しては自信ありありです。

    とふっておいて、うpするかまだ微妙ですが。


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